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2005年7月1日

月刊ロジスティックスに掲載されました

ITに強い運送業者

2004年

 

記事の詳しい内容

長野通運(株)は地元の荷主企業の要請を受け、昭和25年に設立された。2代目の宮崎社長は理工系の大学を卒業後、NECに入社。当時は無線機の開発に携わっていたという、運送業界においては異色の経歴の持ち主。 「社長は趣味と実益を兼ねて、コンピューターの導入を早い時期から行い、いまから25年以上前には給与計算の仕組みを自ら手作りしてしまったほど。基本設計の知識を持っていただけに、コンピューターは便利に利用する道具という感覚で、システム開発、導入も自然な流れの中で行って来た」

(宮崎常務)最初の倉庫システムをつくりあげたのはいまから20年以上も前のこと。「(見た目では判断できない)原紙の在庫管理にシステムを導入したのだが、(固定ロケーション主流の時代に)システム管理で製品の位置が把握できるのであれば、同じアイテムであっても別の場所にあってもいいのではないか。むしろ空いた場所に荷物を置いていくべきだ」という先進的な発想のもと、仕組みを構築していった。こうした積極的なシステム活用による物流事業の効率化・サービス向上の姿勢は、その後も受け継がれ、12年前には川中島営業所において1パレット毎のバーコード管理ができる仕組みを開発・導入。これは荷主側から車両こと1パレットごとの入出庫情報をオンラインで受信し、情報をもとに入出庫裏を発行。在庫管理を行う仕組み(作業完了後、確認済み入出庫票を回収し、事務所オペレータが在庫に反映)で、昨年4月からはこの仕組みをさらに大幅に進化させ、入出庫からピッキング、車輌への積込みまで無線滞末を利用し、リアルタイムで管理できる配送センターシステム「まるうん1号・2号」(2号は移動ラックシステムに対応)として稼動させている。

 ▼物流事業者の課題をすべて解消した満足いくシステムに

さて、旧システムは課題として

①同一商品でも複数ロットが存在しているため、熟練した作業員に先入れ先出しの判断を頼っていた、 ②出庫作業は、バーコード読取り、入力によって、データ上はもっとも日付が古いものか確認ができるものの、作業が神人以上で同時進行している関係でじっさいのロット情報と乖離が生じてしまう、⑧毎週、棚卸をしないとコンピュータ在庫と実在庫との乖離が大きくなってしまう-ことがあげられていた。 「主力荷主である食品メーカーでは、先入れ先出し、日付管理が厳格で、先に届いた商品より後に届いた商品の方がたとえ1日古いだけでも全数返品買取は当然。
 実在庫との乖離を含めて、生産的でないところに人手がかかっており、こうした問題をすべて解決するため、新システムにおいては無線端末を使ったリアルタイムの管理をしようということになった。(宮崎常務)

導入による改善点は、

数量違い、ロット違い等が皆無になり、結果として週1回行っていた棚卸作業が必要なくなった(2人で1日がかりで行っていた)
事務作業にかかる人員を4人(入力作業があったため)から1人弱に削減、
実在庫とデータの数量は完全合致が当たり前となり荷主からの信頼性が高まった、
無線端末の簡単な操作さえ覚えてしまえば、熟練の有無に間らず誰でも現場作業に対応できる、
当日入庫・当日出庫品について、 その場に無い在庫についても迅速な対応が図れるようになった、
集荷アイテム数など作業員ごとのデータがとれるようになり、労務管理システムとの連携で実績に基づく給与体系を構築できた、
完全ペーパーレス化が実現できたことがあげられる。

 また、「人は必ず間違いをおかすもの」という発想。から、集荷時には無線端末のなかで必ず残数入力をさせ、数量違いのゼロ化を実現。棚卸・積込み前集荷晶検品は一切、行わない。さらにこれまではシステムの限界から一律で、在庫引当後に足りない分を、当日入荷分で補充し配送していたが、庫内作業の効率化のため当日車両分で総出荷が補えるものについては、積極的にクロスドック方式での配送を活用し、作業の中抜き化を図っている。 ここまで行えるシステムなら他社でもあるが、同社の仕組みの面白いのは、入出庫以外に積込みまで、すべて無線端末からの指示で作業が完結するところ。
 配車・積込・積載シミュレーションシステム(重さ・高さ・配送順など多数の要素から反映する)がすべて一括で管理され、情報がリアルタイムで反映される。出荷時には無線端末をみることで積込み可能な車両番号を選択。あとは当該車輌に積込むべき商品が1パレットづつロケーション表示され、指示されたものを車両の前から積んでいくだけ。作業日は熟練の有無に問わず、まったく考えずに積み込みができるような仕組みとなっている。トレース情報については、もちろん荷主側へ公開しており、たとえ出荷先荷物が車両5台分に分かれていてもどの車両のどこのパレットに何月何日ロットのどのアイテムが何ケース搭載され、それがいつまでに到着する予定になっているのかが即座にわかるようになっている」(宮崎常務)

今春から配送センターシステムの外販をスタート

「物流現場の立場から課題を解消した自信作」(宮崎常務)その言葉はけっして誇大なものではない。実際このシステムが構築されてから、荷主側からのさまざまな話がでており、今年もあらたな物流センター建設が予定されているという。ほかからのシステムの評価も高いことから、今年春から配送センターシステム「まるうんl号・2号」(2号は移動ラックシステムに対応)として外販もスタートさせている。 「あくまでこのシステムは販売することが主目的ではなく、自分たちが使え、荷主のためになればいいと思って構築している。そのため販売本数がどうかという目標は取り立てて持っていない。ただ、使う側(現場側)に立ったシステムとして、レンタル活用も含めて提供の仕方を考えている」(宮崎常務)物流事業者が生み出した「配送システム」の今後に期待大だ。